【45期生】岐阜の恵比寿神様

2/01/2019 大阪府時計高等職業訓練校

新年が明けましたが、皆様いかがお過ごしでしょうか?
我校は大阪が「えべっさん」で賑わう頃に毎年恒例の特別授業が行われます。


1月10日に岐阜から客員講師として何時も柔和で恵比寿顔の牧野敏夫先生をお招きし「ヒゲゼンマイ調整の実演講義」をして頂きました。

ヒゲゼンマイと言うのは身近な物に例えると蚊取り線香の様な形をしています。主に金属製の約0.03mmの太さ(髪の毛よりも細いです!物によって若干太さは違います)で均等に約13~14巻され、伸び縮みする非常に小さく繊細な部品です。機械式時計の心臓部である調速機構のテンプに組み込まれています。
時計には調速機構と言う部分があります。ボンボン時計では振り子に当たり、正確なリズムを刻みそれに連なる歯車が回るスピードをコントロールする最もデリケートな所なのです。
振り子の紐の長短で時計に遅れ進みが出る様にヒゲゼンマイも長ければ遅れに短くすると進みになります。
理想的な形は等間隔に渦が巻いている状態なのですが、時計の日常の使い方(スポーツや激しい仕事等)や時計を落下させてしまったりして衝撃を与えてしまうとデリケートなヒゲゼンマイは変形をして、時計の精度が悪くなったり最悪止まってしまいます。
今日の授業はその変形したヒゲゼンマイを牧野先生にどの様に直したら良いか実演・解説と指導をして頂きました。
牧野先生はリコー時計に40年以上勤務されておられた方で組立課におられた20代前半には出荷前のヒゲゼンマイの振れ取り作業を一日500個もこなされていました。
この手練の技を買われ1973年に「時計修理」における技能五輪全国大会に会社及び岐阜県代表(地方大会一位)として出場されました。

 
 
結果、見事金メダルを獲得されました。その時同会場で御一緒に銀メダルを獲得されたのが訓練校の講師玉田寿夫先生です。その後、牧野先生は日本代表としてドイツのミュンヘンで開催された技能五輪世界大会時計修理部門に出場され並みいる強豪国の代表と競われ見事銀メダルを獲得されました。
今日は特別授業と言う事で牧野先生・玉田先生の御二人から御指導して頂ける何とも贅沢な授業でした。
 
実際にまず牧野先生にいびつに変形したヒゲゼンマイを実演で直していただきました。

あっと言う間に綺麗な波紋の形になって行く様を生徒は驚嘆しながら食い入るように見ていました。その後でヒゲ直し専用のピンセット(常用使いの物より極端に先端が細いです)の使い方や変形の症状別に何処をどの様に直していけば良いのかを懇切丁寧に解説して頂きました。生徒も支給された故意に変形させたヒゲゼンマイを顕微鏡を覗きながら直します。
髪の毛より細い物なので所によっては(外端より内端の修正はほんの少し触っただけでも全体に影響を与えます)息を止めて自分の鼓動を感じながらの作業になります。この作業、本当に神経と根気を使います!でも生徒の皆さん、お二人の御指導のおかげもありなかなか頑張りました!

 
 
最後になりますが、遠路から来て頂き生徒たちにかけがえのない福を授けて頂きました牧野先生、本当に有難うございました。